表紙

建築家 林昌二毒本』

総頁 368頁
(193×250mm)
定価:3,360 円(本体:3,200円)
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設計という仕事は、多元高次方程式を解くに似た仕事です。
さまざまな仮説を立て、試行錯誤を繰り返して正解を探ってゆきます。
何十枚ものスケッチを重ねても、なかなか思うような設計に達しないで苦労し、もう私の才能ではこれで打ち止めかというとき、ふと別の案がひらめき、それを描いてみると素敵な解決があったことがわかる、設計にはそういうなんともいいがたい悦楽の世界があります。
神が降臨したとしかいいようのない瞬間です。(林昌二)

 本書を編むにあたり、これまで著者が書いてきたもの、話してきたものの全記録が示された。それは驚くほど膨大な量で、設計のかたわら、経営のかたわらに書くことを副次的に行ってきたとはとうてい思えない意思と、書き留めようとするエネルギーが感じられた。その全記録を自由に駆使して本書を編むこと、これが編集子に求められた。
 記録の中に、二○○○年に行われた「テーブルトーク」の記録があった。およそ五○年に及ぶ林昌二氏の建築生活を総括するように、都合七回、元毎日新聞編集委員の本間義人氏を主な聞き手として、毎回、日建設計の内部で一○人ほどを相手に、フランクな雰囲気で語ったものである。
 本書はこのテーブルトークを六回分に再編・整理し、これを構成の主軸に置いて、林氏の年代と同調させながら全体構成を図っている。ここでは、これまでの著書に未収録の著作、主には二○歳台のもの、また一九九○年代以降のもの、さらに、連載の執筆ものなどを中心に整理を行っている。なかにはすでに他に収録ずみだが、今回、建築生活を総括するうえで必要と思われるものを再度取り込んだ。そして建築家として成し得た仕事、建築作品を、テーブルトークとからませながら取り上げている。(ノートより)


contents


ノート
設計、その悦楽の世界を求めて

20代 建築ことはじめ―――住宅の時代
◎ブロック造のT氏邸
◎丘の上のゲストハウス
◎住友商事衾町社宅
◎掛川市庁舎
◎私たちの家(I期)
◎兄たちのすまい
・清家清と現代の住居デザイン
・アトリエから脱皮して共同体へ
・一流のエキステリヤー・デザイン 
・民衆と建築との単純な結びつきよりも建築にたずさわるものの民衆としての自覚を
・レーモンドのディテール
・『新建築』QQQQ欄・投稿七編  商売とARBEIT/無題/一等案実現のために立て! 
著作権の確立は日常の闘いで/学会賞にもの申す/日本建築家協会へ/民衆ノイローゼ論

30代 コンペの周辺―――私のコンペ遍歴
◎国立京都国際会館コンペ応募案
◎大阪万国博リコー館
◎SBC信越放送美ヶ原送信所
◎東洋経済新報社
◎三愛ドリームセンター
◎某公館
◎浜松市体育館 
◎リコー時計恵那独身寮・家族寮
◎裏磐梯国民休暇村宿舎
◎信濃美術館 
◎パレスサイドビル
・パレスサイドビルについて
・パレスサイドビルの時間―――三つの時代、三人の批評
・私の壊した名建築

40代 施主論―――私が出会ったクライアントたち
◎ポーラ五反田ビル 
◎静岡県庁東館
◎茨城県議会議事堂
◎サイクルスポーツセンター
◎日本IBM本社
◎自治医科大学
◎三井物産本社ビル
◎沖縄海洋博覧会住友館
◎山之内製薬本社ビル
◎日本プレスセンタービル
・建築から脱出した経験――大阪万博リコー館
◎私たちの家(II期)
・対談「私たちの家」林昌二+林雅子 
・私と私たちにとっての「設計」 
・その社会が建築を創る――ある批評家にこたえて
・私にとっての批評家としての山本学治



 
50代 本社ビル論
◎伊藤忠本社ビル
◎新宿NSビル
◎日中友好会館別館
◎三井住友海上ビル
◎新・東京都庁舎コンペ応募案
●オフィス論:オフィスの世紀 

60代 同時代の建築を語る―私の印象に残った建築
◎NEC本社ビル
◎文京シビックセンター(I期)
◎掛川市庁舎(新)
・建築の転生ということ―――掛川・旧庁舎から新庁舎へ
・新庁舎の設計について
・保存・再生・新生―――日本火災横浜ビルに関連して
・県議事堂から県立図書館へ―――「建築の力」が生んだ再生例
・「アトリウムが危ない」または「突然の敵・新たなる敵」
・災害と戦う決意が必要 
・「建築家」は、いなくてよいか
・窓は気味が悪い?
・一九九六年の建築―――既成の枠を超えた三つの建築
・逆設計
・吉村順三さんを悼む
・清家研究室の思い出と傑作「私の家」
・家の悲鳴
・競争原理か、信頼原理か―――設計入札に対する見解
・二二世紀をどうつくるか

70代 日建設計のDNA
◎ポーラ美術館
・鈴木常司前会長とポーラ美術館のこと
・お別れのご挨拶 
・国会移転は必要、東京のためにも―――現国会議事堂はミュージアムに、霞が関はガバメントパークに
・ニューヨーク・ワールドトレードセンタービルの崩壊をどう受け止めるか
・設計事務所にとって組合とは?
・建築博物館という小さな芽
・「倫理なき社会に」改めて建築家の倫理を考える
・「夜目遠目」 未来をむしばむJV中毒/鳴呼、 ゼネコンとの設計JV/木造は鍼灸か
脱建築/9・11以降/百年建築?

年表
執筆リスト
作品掲載リスト
図表(担当作品の延床面積と高さの推移)

批評
批判的であり、実践的でもある例外 隈 研吾
建築を育むことの意義 建築家・林昌二の仕事 松隈 洋

編集後記として 石堂 威
あとがき



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