叙情詩としての建築と, 受け継がれてきた文学との接点を探る 待望の建築論! 本書は,プロフェッサーアーキテクトとして実際の設計に携わる傍ら,長年にわたり執筆活動を続けてきた若山滋の建築作品および論文を1冊にまとめたものである.建築家,建築学者,そして文学者としての側面を合わせ持つ著者は,これまで「工業化構法」や「風土や伝統」「文学の中の建築」といったものを対象に,幅広い活動を続け,その成果を実作や著作物で発表してきた.特に比較文化論を用いた風土と伝統に関する客観的な考察は,読む人にヒントを与え,また,文学作品を建築の観点から分析したユニークな研究は,建築と文学の両分野に一連の成果をもたらしている. 本書では,こうした活動の中から,建築作品9件と論文18本を採録した.論文は,ほとんどが今回のための書き下ろしである.わかりやすい文章は,建築に携わる人だけでなく,専門外の人にもお勧めできる.「建築の向こう側」にあるものを,たゆまぬ探究心をもって追い求める著者の姿勢を通して,文化としての建築が浮かび上がってくるであろう. 書評:「平易な言葉で風景の深部を描く」内藤廣(建築家) ※『新建築』に掲載された本誌の書評です. ●建築へ向かう旅 ―久米設計まで― 建築の向こう側 最後の楽園 ? その風土と近代 積み上げる文化と組み立てる文化 神山への一木 [不二の一文字堂] 図書の上に柔らかい光を [高萩市立図書館・歴史民俗資料館] 構法からの様式論 篠田桃紅とグロピウス夫人 文化の振り子 ビルマの建築 水の風土に [ビルマ中央農業開発研修センター] 組織と個人 鼎談〈平倉章二・桑原義彦・若山滋〉 ●文学の空間へ ―研究室創始期― 地方都市と世界都市 セミ・インフラ、セミ・パブリック [都市プロジェクト] 文学の中の建築 『万葉集』の空間 都市化への背反 『源氏物語』の空間 柔らかい多重の隔て 司馬太郎とビル・ゲイツ 哲学の空間 [哲学たいけん村無我苑 瞑想回廊] 壁面を音楽に [モーツァルト 中部電力新名古屋火力発電所外観デザイン] 遊蕩の残影 中村遊廓の都市計画と室内意匠 ●文化的無意識 ―研究室展開期― 草庵と信長と利休 南蛮の彼方に 老人に「建築」を [老人保健施設 サンバレーかかみの] 工学の表象 [名古屋工業大学正門] 漱石の空間 西洋風建築と南画的世界 都市彷徨小説としての『罪と罰』 小林秀雄の建築論 ランドスケープとしての架構 [東邦ガス知多緑浜工場管理センター] 公園に本を建てる [西尾市岩瀬文庫展示棟] 文字・建築・メディア 文化的無意識 あとがき/作品データ/年表・研究室メンバーリスト |