1965年から70年にかけてつくられた1,074戸の県営住宅の建て替え.2000年には妹島和世氏など4人の女性建築家による南ブロック(430戸)が竣工している.今回の北ブロックは中庭を取り囲むように配置される5階から10階建ての住棟群からなる620戸.それらはA,B,Cと3つのブロックに分けられ,その順に今後10年をかけて段階的に建て替えられていく予定である.

「北ブロック」は3棟に分かれた計画で全620戸の住戸が予定されている.立体的な都市インフラを調整者がデザインし,そこに個々の設計者による住戸がはめ込まれるという計画だ.配置計画,構造,設備を含めた全体計画と調整を磯崎新アトリエと地元の設計事務所が担当.住戸設計には21組の設計者を起用.外国(アジア)の建築家,日本の建築家,アーティスト,素材を生かした地元の専門職人とさまざまな人からなる.ひとりがひとつの住棟に10戸ずつ,3棟で30戸の設計を担当し,どの区画をどの設計者が担当するかは乱数を使いランダムに分散されている.それぞれの案はファサードにもそのまま現れ,お互いの調整は特に必要ではない.ランダムな全体の集積は「都市」のあり方としてひとりの建築家がすべてを決めてしまうのではなく,多数の設計者がときにはあつれきを起こしながらつくるほうがよいのではないかとの意図だ.

ここでは立体化した土地というアイデアのため,構造に工場生産される耐久性の高いプレストレスト・プレキャスト・コンクリート,構造と無関係に内部がつくれるように梁を2,3層おきに配置した間口9m,奥行7.5mの「メガ・フレーム」,免震構造の技術が使われている(免震構造はその規模から有効性の高いAブロックのみとされる).設備面ではメンテナンスの容易さと設計の自由度のために住戸と共用廊下の間に幅600mmの設備レイヤーを設けて縦シャフトを配置している.寿命の長い構造体と変化の予想されるプラン,設備との明確な区分がなされているのだ.


岐阜県営北方住宅北ブロック (2000-)
所在地 岐阜県本巣郡北方町
全体調整 磯崎新アトリエ 岬建築事務所
大建設計 金華建築事務所
住戸設計 張永和 承孝相 ゲイリー・チャン
 ケイ・ニー・タン 横尾忠則+小池ひろの 木下庸子
 貝島桃代 吉松秀樹 岸和郎 小嶋一浩 オークヴィレッジ
 職人社秀平組+西建築設計事務所 大畑窯業+エイ・ケイ設計
 ヴィヴィッド岐阜(NPO) 関谷直弘 櫻井宮雄 藤根六平
 鈴木由紀子 後藤淑子 向井一比古
構造設計 佐々木睦朗構造計画研究所
設備設計 岬設備設計事務所
敷地面積 62,891m2
延床面積
 52,172m2(住棟)
 326m2(生涯学習センター)
 321m2(集会所)
 299m2(医療・福祉関連施設)
各階面積
Aブロック
1階 2,041m2/2階 1,847m2
3階 1,920m2/4階 2,430m2
5階 2,357m2/6階 2,357m2
7階 2,454m2/8階 2,357m2
9階 2,430m2/10階 2,333m2
Bブロック
1階 2,406m2/2階 2,187m2
3階 2,260m2/4階 2,406m2
5階 2,187m2/6階 1,823m2
7階 1,701m2
Cブロック
1階 2,406m2/2階 2,041m2
3階 2,017m2/4階 2,406m2
5階 2,284m2/6階 1,823m2
7階 1,701m2
住戸面積 53〜90m2
構造 プレキャスト・プレストレストコンクリート造
 鉄筋コンクリート造 (Aブロックのみ免震構造)
規模 地上10階(Aブロック)
  地上7階 一部5階(B・Cブロック)
最高高 30,900mm
地域地区 都市計画区域内 市街化区域
  第1種中高層住居専用地域 法22条地域
住戸タイプ 公営,賃貸
住戸数 278戸(Aブロック)
 173戸(Bブロック)
 169戸(Cブロック)
竣工予定 2006年3月(Aブロック1期)
2012年3月(全体)

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